激動の時代に生きた若者達の青春を描く歴史ロマン!

『ベルサイユのばら』はフランス革命勃発直前の18世紀の激動のフランスを舞台にした、池田理代子作の少女漫画だ。1972年春から1973年秋まで週刊「マーガレット」に連載されたこの『ベルサイユのばら』は少女マンガ史上空前のヒットとなり、連載終了間もない1974年4月には早くも宝塚で第1回目の舞台化が実現、さらに1979年3月には実写映画も公開されている。こうした人気を受け、制作されたアニメシリーズは1979年10月10日から1980年9月3日まで全40話が日本テレビ系列で放送された。

物語は娘に生まれながら、将軍家の跡継ぎとして育った男装の麗人オスカルを中心に、オスカルとは兄弟のように育った従卒アンドレ、そしてルイ16世の妃マリー・アントワネットとスウェーデン貴族フェルゼン……この4人の愛と青春を軸に描かれていく。 舞台は18世紀の中期、華やかかりしフランス。近衛隊長となったオスカルは、オーストリアより嫁いできたアントワネットに仕えることとなる。そのアントワネットを待っていたのは、彼女の理想には程遠い控えめで内気な少年だった。失意の中、仮面舞踏会でアントワネットは運命的な出会いをしてしまう。明るく華やかな貴公子……遊学中のスウェーデン貴族フェルゼンに、互いの身分を知りつつ、急速に惹かれていく二人は、悲劇に向かうことを知りつつも、密会を重ねる……。オスカルも二人の禁断の恋に気をもみつつ、だが次第にフェルゼンへの想いを募らせていく。その想いもまた決して叶わない恋だった。フェルゼンに親友として遇せられ、アントワネットへの一途な愛を告白されて戸惑い揺れるオスカル……。そのオスカルをアンドレは静かに見守る。だが彼もまた、身分違いの想いを胸に抱いていた。恋焦がれ、すれ違い、諦め、そして想いを募らせる……。だが、時代は確実に変わろうとしていた。時代が激動していく中、それぞれの恋も変転し、それでも彼らは自らの想いに命を燃やしていく……。 『ベルサイユのばら』は、悩み葛藤し、それでも信念を貫こうと激動の時代を生き抜いた若者達の姿を史実を交えつつ描いた歴史ロマンである。


絢爛豪華な宮廷の裏に渦巻く野心と欲望

物語の舞台の1つ、華やかな宮廷、ベルサイユ。だが、そこは様々な思惑が渦巻いていた。王位を狙うオルレアン公は、表向きは貴族然として立ち回りながら、裏では王太子の暗殺など策謀を巡らす。ルイ15世の寵愛を受け権勢を誇ったデュ・バリー伯爵婦人はアントワネットを目の敵とし彼女を追い落とすために様々な策をめぐらす。ポニャック伯夫人も王妃となったアントワネットに取り入って彼女から巨額の金を引き出させようとし、野望に燃えるジャンヌ・バロアは王家と宮廷を震撼させた首飾り事件を起こす……。オスカルも、彼女達の野心に否応なく巻き込まれていく。そんな欲望と陰謀に彩られた宮廷劇も見所のひとつだろう。

陰謀を巡らすオルレアン公はアントワネットを嫌うデュ・バリーに接近する

ルイ15世の威光を背に、宮廷で思うがままに振る舞っていたデュ・バリー

ジャンヌの果てしない野望のもたらしたものは、法廷での裁きだった


王族、貴族、そして市井の人々……激動の時代を生きる人々の群像劇

『ベルサイユのばら』で描かれるのは、オスカルやアントワネットたち、王家や貴族だけではない。パリの貧しい家庭に育ったロザリーは、ひょんなことからオスカルに引き取られて妹のように可愛がられるが、姉の起こした事件に心を痛める。だが、やがて自分の幸せを見つける。黒い騎士事件に関わったことは、オスカルの目をフランスの抱える矛盾や問題に向けさせるきっかけの一つとなった。そもそも、デュ・バリーやジャンヌら野望の女たちも、何も持たないがゆえに這い上がろうと必死にあがいたが故の行動だった。こうした激動の時代を生きた多くの人々の姿が細やかに描かれていく。

華やかな王妃の影に隠れた国王ルイ16世も、家庭では良き父であった

ベルナールとロザリーは革命も生き抜き、その後のフランスを見続ける

当初はオスカルに反目していたアラン。彼もオスカルに恋心をいだくようになる


そして……時代は革命へと向かう!

だが、時代の変わり目は確実に近づいていた。ある時、オスカルは困窮する庶民の生活を目の当たりにし、貴族と平民との間にある、あまりに大きな格差に心を痛める。さらにロザリーや若き新聞記者ベルナールとの出会いはフランスの抱える様々な問題を目にすることとなり、王家や支配体制に対しても疑問を抱くようになる。夜毎に豪華な舞踏会や晩餐会を開催し、放蕩を続ける王侯貴族達……。平民出身者が大半を占める衛兵隊に配属されたことで、オスカルは平民への理解をさらに深めていく。そして地位、名誉、野心、そして恋……一人一人のささやかな願いをも飲み込む、大きなうねりは音を立てて、フランスを飲み込む!

男として将軍家の跡取りとして育てられ王家に仕えてきたオスカルは、敬愛するアントワネット、そしてそれまでの自分との決別を決意する。